記事一覧

不動産価値を活用した新たなファイナンスモデル

わが国の住宅ローンに関しては、欧米と異なる側面をもっています。いちばん大きな点は「リコースローン」といわれるもので、借主が何かの事情で融資金を返済できなくなった際に、担保となっている不動産の処分を行ったとしても、処分価格が融資金額に満たなかった場合、借主に残金の支払義務が残ってしまう問題です。また、今日一般的となっている保証会社を利用した住宅ローンについても、借主が返済できなくなった場合、金融機関に対しては保証会社がかわりに融資金を全額返済しますが、借主と保証会社との間には債権債務関係が残り、保証会社に対して返済義務が発生します。仮に、保証委託契約に基づき担保権を設定していた自宅を処分しても、保証会社に負っている負債を全額返済できない場合、残額については借主がなんらかの方法で返済しなければなりません。

つまり、リコースローンと同等の扱いになります。一方、アメリカなどでは、万が一、借入金の返済ができなくなり担保不動産を売却することで返済した際に、その金額が融資残金に満たなくても残った残金に返済義務は生じず、他の資産に責任はいっさい及ばないという「ノンリコースローン」という考え方があります。現在、日本国内では、証券化等の手法を活用した大型の賃貸不動産向け案件に対して、当該ノンリコース型の融資を取り扱うケースはありますが、個人向け住宅ローンに対七て当該仕組みを利用した事例はまだありません。

しかし、個人のライフスタイルの変化を考えた場合、不動産価値を前提としたファイナンスモデルも検討できるのではないでしょうか。以下、中長期的な資産として「住宅」保有を目的にするのではなく、ライフステージ別にライフスタイルを重視して「住宅を住み替える」という方を対象とした、ノンリコース型の住宅ローンモデルを考えてみたいと思います。前提となるモデルは、5年をメドに住替えを前提に物件を購入、賃貸と同等レベルの費用負担で物件を不動産として保有し、5年後に市場で対象とする物件を処分するが、売却額と融資残高には関係なく、物件処分により残金は完済されるというものです。

対象とする不動産の5年後の想定される市場売却価格を前提に、物件の購入価格と市場売却想定価格の差額分を期間5年間の約定返済型ローンとし、残額は期日一括返済ローンとするスキームです。5年間の約定返済分ローンについては変動金利、5年期日一括部分については固定金利を適用することとしますが、金融機関の主要調達商品の期間を考えれば商品としての金利リスク軽減は相当程度可能となります。対象とする不動産については5年後に実勢時価額で不動産管理会社が現物を買い取ることを前提としますが、市場時価が想定していた時価額を上回っていれば売却益の一部を借主に還元することも考えます。逆に市場時価が想定価格を下回る場合も想定されますが、ノンリコースローンとして扱うことで、差額分の支払はないものとします。